出産当日-2

 昼前に妻から前兆の報告を受け、自分は職場を離れられないことに猛烈な苛立ちが続き、私は既に平常心を失っていた。

 夕方に妻から電話がかかってきた。無事に元気な男の子が生まれた、と。平常心を失っていた私、全く喜べなかった。むしろガッカリという気持ちだった。妻のそばに いてあげられず、息子の誕生の瞬間に立ち会えず、結局何もできず。

 1か月に1度だけの、夜 超・遅くまでの業務が続いた。ようやく仕事を終え、できるだけ急ぐべく普段とは違う組み合わせの電車で帰路についた。が、よりによって その電車で遅延が複数回発生したり、挙げ句の果てには降りる駅を間違えたり(流石に これは自己責任か)。

 帰宅後に妻から要請のあった荷物を取り纏めるも、どうしても必要な物「だけ」が面白いぐらいに絶対に見付からず。探しているうちに時間だけが過ぎた。おめでたい日のはずなのに、全く嬉しさを感じることができず、誰に対して ぶつければよいのか やりようのない怒りばかりが募った。
 
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 10/12