その名は美華惠(みかえ)

 赤ん坊の名前は生まれる前から決まっていた。いや、厳密には20年前から決まっていた。自分に娘ができたら、名前は「みかえ」にしよう。何が切っ掛けだったのかはハッキリと思い出せないのだが、20年前のある日、突然 頭の中に そう閃いた。私の名前をヘブライ語読みすると「ミカエル」になり、これは大天使の名前でもある。「みかえ」の読みは ここから来ている。

 名前を構成する漢字は時を経るにつれて徐々に変わってきたが、最終的には「美華惠」で決着が付いた。この子の母親の名前から「美」、私にとって心の母と呼ぶべき人の源氏名から「華」、そして この子の母方の祖母(故人)の名前から「惠(旧書体)」の字を受け継いだ。4人の名前と意味、そして願いを込めた名前である。

 この子にとっての母方の祖母は5年前に他界したため、残念ながら孫娘の姿を見ることは無かった。しかし、彼女は妻の心の中に、義父の、義兄の、義姉の心の中に生き続けている。私には会う機会が無かったため、果たして彼女が私の心の中に生きてくれているのか、自分にも分からない。しかし、赤ん坊の名前につけた「惠」の字を見るたびに、みんなが この子の祖母のことを思い出してくれるだろう。きっと この子のことを見守ってくれている。私は そう思いたい。
 
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